“Niibori”オリジナルの感動を生む仕掛けが存在します。それは幸福感もたっぷり生むレベルの仕掛けです。 その中の一つに、NRM (エヌ・アール・エム)=Niibori Rhythm Method (For Guitar)ニイボリ・リズム・メソードがあります。ギターを用いたリズムメソードです。 ギターは太鼓に棹をつけ糸(弦)を張った楽器です。ボディは太鼓であり、弦を使用してスネアの音を出すことも出来ます。 NRMでは指でギターを叩きます。指の形・本数、ギターを打つ場所を変えることで、様々な音色を出すことができます。 このメソードは生徒さんのリズム学習をテーマにスタートしましたが、ギターの伝統的な奏法でもあるノック・ザ・ボディを中心とした高質な音楽芸術表現が出来ないかと、更に研究を進めました。 何故ならば、1本(1種類)のギターでも、多彩な表現ができるのですが、Niiboriには各種音域ギターがあります。(エレキ系のオリジナルギターもありますが、今回はボディを太鼓として使用できる生ギター系で話を進めます) 最高音のソプラニーノギター(と ピッコロギター)、ソプラノギター、高音のアルトギター、中音のプライムギター、低音のバスギター、最低音のコントラバスギターと立奏式のギタロン。これらの太鼓の大きさは、高音のギターは小さく、低音のものは大きいです。これらに加え、スチール弦を使用した高・中・低音のチェンバロギターがあります。 これらの大きさも形状も異なるギターで、それを叩く指の形も多彩に使用すれば、音色が多彩な太鼓オケでありながら、ギターの弦を弾く奏法も取り入れたギター太鼓オーケストラが実現し、そのギター太鼓オケでなければ表現できない音楽の研究を進めて行きました。 ティンパニー,ドラムス,和太鼓では様々なバチ、スティックを用いますが、音色や音量を変えるには、バチやスティックを素早く持ち替える必要があります。しかしギター太鼓オケのバチは奏者の指ですから、持ち替える必要がなく、素早く音色を変化させることができます。 指バチの種類は、指の本数、使う場所=腹・関節・掌・爪、形=平たく(平手)・少し丸める・握る(こぶし)等。 バチ(指)の変化に加え、ギターは叩く場所により更に音色を変えられる太鼓です。表面板の上(小さい部分)・下(大きい部分)、ブリッジ(板上・弦上)、側面板(横板の上・下)、裏板(上・下)、ヘッド(板・弦)等々。 これらの指と叩く位置の組み合わせによって実に多彩な音色が作り出せます。 例えば、側面板を両手各指の爪で順次に打てば、雨の音が表現できます。それはウィーン&ミュンヘン公演で、大人数(約70名)で奏した時は、聴衆が「雨か!?」とホールの天井を見上げたほどでした。またギターを膝の上に置き、表面板を上向きにして両手の指の腹でタカタッ・タカタッと連続して打てば馬が走る音に聞こえ、大勢で叩けば、騎馬隊が走っている音に聞こえます。 裏板の上部(ヘッド側)を1本指(人差し指か中指)の腹(第1関節)で打つと鼓(つづみ)に似た音が出せます。よく響くツボは、1センチ以内ですから周囲を何度も打ち、見つけます。ソプラノギターやアルトギター等、高音用のギターの裏板打ちが最も鼓に近い音が出せます。 新堀式の各種音域ギターを打つ位置,指,奏者の人数,強弱,アゴーギク(速度増減)により、数限りない多彩な音の変化を得られ、またそれにアクション(呼吸法),PA,照明,コスチュームを加えると、非常にレベルの高い芸術表現が可能である事が分かりました。 このNRMをしっかりと記録し、多くの人が学び、楽しめるように6冊の本にまとめました。これらの本には、NRM用に考案した記号の説明、基礎的な事から、重奏・合奏、また先生方がモチーフを使い作曲した作品、そして第6集ではそれらの集大成として、私が作曲した交響詩「才の神」でまとめました。 私が初めてNRMの作品として、我が新堀ギターオーケストラ(Nオケ)に音を出してもらった曲は「NRM14・01」(平成元年=1989年作で後に「元年」という曲名を付けました)で、タイトルの14・01とは14の楽器を使用した作品1番という意味です。この初めての作品に、元ギター教師でもあったワイフからは“頭がおかしくなったんじゃない?”と言われ、オケのメンバーも“なんだこれ?”と言う感じで、私自身も照れながら“まあ、音を出してみてよ”…そして演奏後にメンバーが大笑いというスタートでした。普段は高度な演奏技術を要求される曲を演奏しているNオケメンバーにとっては当然の反応でした。私はこのNRM(リズムメソード)の重要性と可能性を説明し、ハーモニー誌(本誌)に連載で作品を発表し、重奏やギタオケ用の曲も作り続け、オケのメンバーもそれを理解してくれるようになりました。ですからこの6つの曲集は、その歴史を刻んだものでもあるのです。そしてようやくの交響詩「才の神」までたどり着いたのです。 上越の大島村を舞台に描いたこの交響詩は4つのシーン(楽章)からできています。シーン1は「春の序曲」、2は「ワンダフルモーニング」、3は「森のワルツ」、そしてシーン4が「才の神の響宴」です。 シーン4は、最高にとんでもない曲です!なんと“ギター太鼓オーケストラ”と、“和太鼓群”との共演曲なのです。アリとゾウの共演!とでも言いましょうか(笑)。これもやり始めた時は内外から苦情・非難の的でした。 各種音域ギターのメンバーは50名以上必要で、和太鼓メンバーは30名、太鼓の種類は長胴締太鼓,長胴太鼓,やぐら太鼓,宮太鼓,締太鼓、それに加え、響管,半鐘,摺鉦…で爆竹まで使用します。NRM的タイトルで言えば、NRM38P・01!なんと38パートもあるのです。それも和太鼓群入りの大編成ですから、その音量も凄まじく、マネージャーには練習場所の工面から苦労をかけました。広くて防音設備のある会場が必要で、それでさえ「次回はご遠慮ください」と断られてしまうのです。それに加え楽器の搬入・運搬から大変なのです。 何故この様な作品を書いたのか…。当時(1990年代)私は日本の伝統芸術・文化を強く意識して、新堀芸術学院では和太鼓も導入し、その研究も進めていました。日本のオリジナル+ NRM +ギターオーケストラを活かす集大成が、この交響詩「才の神」だったのです。 音量も視覚的にも大変に派手な曲ですが、曲の締めくくりの部分には和太鼓もギター太鼓の音もなく、ギター群の美しいトレモロとハンドベルの音だけになります。迫力ある大音量の後なので、その美しさがいっそう際立ち、平和心・幸福感が溢れてくるのです。どんなに派手な見せ場よりも、ギターを愛する私にとっては、実はここが最大の見せ場なのです。 ギターの最大の魅力は多彩な美音です。指が弦に直に触れて演奏する楽器だから、多くの繊細な美音を生み出すことが出来るのです。右指の演奏する位置,角度,爪の用い方,弦への圧力のかけ方を、ほんの少し変えただけで音が変わります。弦楽器ですからビブラートも多彩にかけられます。その他、ギターならではの奏法も多彩にあるのです。 ギターは、自身(奏者)の心・気持ちをストレートに表現できてしまう楽器とも言えます。 「愛」を最もデリケートに奏で語れます。それは幸せに導ける音です。その様な美音を奏でられるギタリストや、その音を聴いた人達はとても幸せな気持になれるので、これこそギターが生む幸福道です。 1本のギターで生み出せる「愛の音」。これを更に増強する事を考え、生まれたのが新堀式のギターオーケストラです。 初めはプライムギターのみの編成でした。やがてテルツギター(プライムギターより音が1音半高い)などを加えてみたのですが、私が求める音ではなく、以前から構想を練っていた各音域ギターの開発に着手しました。当時の私達の思いは“高音と低音のギターを開発してギター合奏の音域を広げ、音楽の大海原に出航したい!”でした。そしてギター製作者と弦メーカー、オケ(当時は合奏団)のメンバーに尽力してもらい、多くの失敗・困難を乗り越え、誕生したのが、現在使用されている新堀メソードの各種音域ギターです。 この開発の道程は長くなりますので、別の機会にお話ししたいと思います。 各音域ギター間の音域の関係は完全音程(4度, 5度, 8度)であり、これは互いに共鳴しあい、身体に良い影響を与えるとされている倍音(波動)を生み出します。ギター合奏の音量が、1種類のギターのみを使用した時よりも遙かに大きな音量が出せる様になり、音色も一層多彩になり、他の楽器との共演も可能になり、音楽の大海原に我がNオケ号は出航する事ができるようになったのです。 また、新堀式のギター合奏では、基本的には単音をアポヤンド奏法で弾く事を主流にしています。弾弦後、次の弦に右指が触れないアルアイレ奏法はギター独奏では多用し、アポヤンド奏法を使用しないギタリストも存在します。しかし私は、アポヤンドを使用するセゴビア奏法を、師匠の阿部保夫先生から伝授されました。アポヤンド奏法の方が、アルアイレよりも遙かに音量が出せるのです。 これらにより、新堀式のギター合奏,ギターオーケストラは、“愛の音を豊かに奏でる事ができる”のです。この“幸せ感が溢れるサウンド”を皆さんにお届けできる事を大変に嬉しく思っています。