【幸福道6】コロナ禍でのミュージシャンの使命

 2020年7月12日現在、都内の感染者が再び連日200人を超え始めました。そこで、ここ葉山の自宅で予定されていた打ち合わせや取材などは、全て延期やオンラインに変更したところです。

 予想の的中率は100%ではありませんが、以前とは比較にならない程、データ等の信憑性が高くなったという前提で語りたいと思います。(厚生労働省発表の資料などを参考にさせて頂きました)

 今朝は日曜日なので、NHK・TVでの日曜討論会がありました。その時々のリーダーが登壇する非常に信憑性が高い番組です。

 そこで新型コロナウイルス感染拡大について、以下のように発表されました。

 “現在の感染者、特に東京では若者達(主に20代、次に30代)が7~8割を占めている。重症者や死亡者は少ないが、次には多くなった無症状の感染者たちが、会食の場、家庭や職場などで高齢者にもうつし、やがて重症者や死亡者の増が懸念される”との事です。

 若者は活発に活動し、その範囲も広いので感染経路が特定しにくく、その感染者が増えている事は非常に問題であり、無症状の感染者も見つけていく事が、感染爆発をさせないカギだ との事です。

 対策は、マスクの着用,手洗い,3密(密閉,密集,密接)を避け…という事ですが、これらをほとんどの人達が守ったとしても、僅かの人達が(自身が無症状の感染者であるかもしれないのに…)自分には関係ない、面倒だ、感染していないから、また感染しても若ければ軽症ですむから…と、注意を守らずに行動しただけで、いつまでも感染拡大は収束しないのです。

 すでに報道されていますが、若者だって重症化して死んでしまう事もあるのです。

 感染拡大防止をしながら経済を回すには、まず各人の注意・用心をしての行動が必要不可欠なのです。

 さて、今回、私が本項でテーマにしたいのは、コロナ禍を別の角度から見た問題です。それはこの状況での心、精神の事です。

 自粛と深刻な事態を伝える報道の連続、ウイルスへの恐怖、人との関係が希薄となる問題、感染症対策での心労、生活の不安などで、気持ちからくる体調不良や、うつ(鬱)になってしまっている人も増えている事です。

 ある地域の「自殺予防相談窓口」への相談は、2月と比較して4月の相談件数は5倍になったとの事です。そして、増加も懸念されていた自死者数なのですが、実際には4月時点の自死数は前年比の20%減、過去5年の最少との事です。東日本の大震災の時も、自死者は減じました。戦争や大災害時には自死者は減じる傾向にあるようです。

 しかし、心の健康を害してしまう人が増えている事は否めません。

 さあ、ここからです。

 今までも述べて来ましたが、大きな災害が、やや落ち着いてきた時こそが、音楽家が大いに貢献する時です。

 生命の危機的状況の渦中ではなく、周囲を見渡し様々な事を考えることができるようになった時、メンタルを害する人が多いのです。災害にあった当事者もですが、それを見た人達までその影響を受けることがあります。

 その時こそ、わずかでも、心が癒され勇気付けられて、愛しさを思い出して頂ける様々な行為が出来るのが音楽家であり、その自覚を持って行動してほしいと思います。

 今回のケースでは、緊急事態宣言発令中からすでに、多くのミュージシャンがオンライン(インターネットを通して)での弾き語りなどに始まり、様々な工夫をした演奏やトークを配信して、多くの人達に元気・楽しさを提供している事を嬉しく思います。もちろん私たちも、その行動を開始しています

 私は今までも、ギター属の音はメンタルヘルス(心の健康)の面でも、人類の文明が始まった時代から大いに貢献してきた事を述べて来ました。今回も、ギターを演奏される皆さんの活躍を大いに望んでいます。

 さて、今回の感染症のパンデミック(世界的な大流行)により人々の行動は制限され、テレワークやオンラインでの授業やミーディングなどが推奨され、はたまたオンライン飲み会までもが行なわれているとか…。

 本校・国際新堀芸術学院でもオンライン授業が行なわれ、私の話もオンラインで、また来年にはオンラインで受講できる高等課程もスタートさせます。この様に、ネット社会、インターネットがなければ、どうなっていた事かと思える事も多いのですが、私は全てをネットで済まそうとする事には賛同できません

 調べ物はもちろんの事、動画に音楽、コミックや小説までもパソコンにスマホ、タブレットでご覧になっている方が増えているようです。

 しかし、このデジタル機器に、風の様に素早く軽くタッチして、膨大な知識を瞬時に得てしまえるという習慣が“本の文字を何度もじっくりと読み考える”という人らしい習慣を弱くさせつつあるのではないかと感じるのです。ギリシャ哲学(人間は考える=哲学するから人間なのだ)から延々として築いて来た人らしさ(神の子らしさ)が消滅しかけているのではないかと…。

 苦労なく手軽に世界中の途方もないコンテンツが得られるという習慣がいっそう進むと、じっくりと一つのものを見なくなりがちです。その結果、深い内容のもの、価値あるものに気付けず、根気無く、飽きやすく、熟考出来ない、すぐ諦める人を多く生み、そこからも心の健康を害する(鬱になってしまう)人も増えるというスパイラルに陥ってしまう危険もあると思うのです。実際に、手軽に入手できる膨大な情報に溺れ、メンタルを害してしまう人もいると聞いています。

 日本の“光”は文化です。日本の“影”は自死者です。

 2020年7月12日現在、厚生労働省の発表によりますと、新型コロナウイルスによる死者は981名。一方、2019年の日本の自死者数は1万9959人です。3万人台からここまでに減じたとは言え、依然として15~29歳(女性)、15~39歳(男性)の死因のトップです。ここには死因不明、不慮の事故とされたものは含んでいません。身体的には元気が溢れているこの年代の人達の自死がトップとは…。そしてこの何倍ものうつ病などメンタルを害してしまっている人がいるわけで、それを想うとあまりのショックに、この文を書くエネルギーも止まってしまいそうです。

 更に地球史を見ても疫病(感染症)拡大後の精神疾患者の数は、国の再スタートを鈍らせる大元になるほど増え、様々な地獄に向かう行動をするものも出現し、メシアが現れて整うまで膨大な年月がかかってしまった事などが、聖書などにも残されています。旧約聖書の時代から疫病と人類の闘いは繰り返されて来たのです。

 このような歴史も勉強する絶好の機会です。

 そして“人が人らしく生きる幸福道”も熟考し、ものの考え方、生き方を、幸福がやって来る様に改善してほしいです。幸福道の物差しで、人類史を見直し、行動してほしいのです。

 大災害の後、また現在のような状況で、メンタルを害する人、精神疾患者は増します。その代表とされるものが、うつ病でしょう。これは脳の病です。

 脳の病では“認知症”もよく知られています。“物忘れ病”や、俗に“ボケ”とも言われています。6割を占めているのがアルツハイマー型なので、認知症=アルツハイマーと思われがちですが、幻視幻聴のあるレビー小体型等、様々な種類があります。

 認知症は老化の進行と共に発生率は高まり、完治が困難というのが現医療の一般的考え方です。

 ややこしいのは、認知症になった人の中には、うつ病を併発したり、その逆もあるという事です。

 うつ病は男女問わず発症する病ですが、現医療で治せる可能性が大いにあります。実際に治った人や、うつが治った事により認知症まで楽になった人たちを、私は知っています。

 専門家のアドバイスと適切な薬と共に、脳が喜ぶ=脳が身体に良いホルモンを出す音楽(4000Hzの音波など)を聞き、身体が元気になり、周りの環境を整えると、相乗効果でどんどん良くなって行きます。表情、目の輝き、行動が変わって行きます。うつ病は改善できるのです。

 今、韓国大統領候補でもあったソウル市長(朴元淳=パク・ウォンスン氏)が、文を残し、山中で亡くなったというニュースが入りました。韓国はテレビ産業面等で日本を抜き第1位となりましたが、現在、自殺率も世界第2位です(1位はロシア。日本は7位だがG7の中ではトップ)。

 危険な感染症が世界で拡大しているこのような時こそ、特に近隣諸国とは力を合わせて“人間の幸福道” “ゴール”を見つけなければならないと思います。

 ソウルは、新堀ギターアンサンブル(NE)の公演が数ヵ所で行なわれた地であり、最近では、JYP(JYパーク)エンターテイメントからデビューした日本人9人のグローバルガールズグループ、Nizi U(ニジュー)と、そのメンバーを選考する虹プロジェクトも話題になっています。

 この様な“国境を越えて良質の音楽を楽しみ合う”事が、地球を結ぶ虹の懸け橋になっていき、手を取り合い感染症にも立ち向かう原動力になると思うのです。